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今回の本はまたも海外のミステリー小説

『遅番記者』ジェイムズ・ジラード
柴田京子=訳 講談社文庫

約450ページ

ミステリーです。一応。犯人を推理していく・・・わけじゃないけど、似たようなもん。
とりあえずこんな話
林の中から全裸の女性の遺体が見つかった。遺体の四肢は切断されており、遺体のそばには奇妙に花が置かれていた。六年前に起きた未解決の連続殺人と手口は同じ。また同一犯の犯行なのか。顔の見えない殺人者に、遅番記者のサム・ホーンが挑む。

というとミステリーだが、これをミステリーと呼ぶのは私には少々抵抗がある。この作品には謎解き要素があまりというかほとんど見受けられない。最初に事件を起こし、容疑者探しのようなこともするが、事件解決がこの小説のメインではない。
じゃあいったいなんだという話になる。読み終わった私でもよくわからない。先ほども言ったが、事件の解決に向かっているのは最初と最後だけ。あとは、ひたすら登場人物の心理描写や人間関係に従事しているのだ。人物の心象描写に関しては非常に巧いと思う。感情を掘り下げ、人の心が映っていくさまの表現は巧みである。
だが、ミステリーとしてはどうか。謎解き要素は皆無、散々引っ張っておいた挙句、解決はあっけない。落ちも弱い。作者としては顔の見えない犯人ということを強調したかったのだろうが、ミステリの落ちとしては少々弱い気がする。

この小説のテーマは何か。
人間の心の奥と道徳観、誰もが犯罪に巻き込まれうる現代社会の恐怖の二点だろう。
前者については成功している。登場人物の周りで起きるさまざまな出来事とそれに対する対応が象徴的に人間の道徳観を映し出している。それに緻密な登場人物の心理描写により、感情移入がしやすく物語りに入りやすい。
だが、二つ目はどうか。少し直接的な描写が多かった気がした。心理描写はあれほど大事に書いているのに、事件回りとなると少々展開を急ぎすぎている気がしてならなかった。この点が非常にもったいない。

登場人物の心理描写からミステリーとして話を作っていくという手法はおもしろいと思ったが、純粋なミステリー特有の狂気とスリルを味わいたいという人には向かないかもしれない。

独特の話としてまとまっているので、人間の心の闇や道徳観に興味のある人は一度読んでみてはいかがか。
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鵜有書店、といってもただのブックレビュー、いや、ただの感想雑文か。
とりあえず読んだ本の感想を自分が忘れないためにもブログに書こうと思う。
これを呼んだ人の本選びの参考の一つにでもなると嬉しいが、まともな文章は書ける気がしない。期待しないで読み流して欲しい。

鵜有書店の第一弾。

『神の名のもとに』メアリー・W・ウォーカー
矢沢聖子=訳 講談社文庫

約570ページ

外国のミステリー小説というよりジャンルとしてはサスペンスかな。(サスペンスとミステリの違いはコチラから)

話を簡単にまとめると次のようになる。

武装したカルトがスクールバスをジャック、そして教団の敷地内に監禁してしまう。カルト教団は、さらった子供たちを世界の終わりに殉教者となるべき存在にしようとしている。
事件の犯人にして教団のリーダーのサミュエル・モーディカイを取材したことから、女性記者のモリー・ケイツが事件に立ち向かうこととなる。モリーが調査を進めていくうち、なぞに包まれていたサミュエル・モーディカイのことが明らかになっていき・・・

と、まあこんな感じだ。サスペンスは落ち(?)が大切のため、これ以上は話さない。ぜひ自分で結末を読んで欲しい。

それでは感想を話そうと思う。まず一言。
おもしろかった。
海外の現代の小説だとパトリシア・コーンウェルくらいしか読んだことがなく、海外小説にはなんとなく血なまぐさいイメージがあったのだがこの本は純粋に楽しめた。

モリーがサミュエル・モーディカイの過去を調べていく過程でのモリーと人とのやりとりが巧く書かれている。人物描写が巧いのだ。多くの人が出てくるのだが、ほとんどの人物に関して性質、表情、感情などが伝わってくる。登場人物同士の会話がテンポを生み出し、話全体を通してのリズムをも作り出している。一冊を通して重い空気なのだが、そのテンポのよさで、重くなりすぎないちょうどいい雰囲気となっている。

この作品の大きなテーマとして、強迫観念というものが存在している。人の持つ強迫観念がどのように人に影響を与えるのか、といったものだ。マイナスに作用するときもあれば、プラスに作用する時だってある。人間という存在の考察といった意味でも興味深い作品である。

いろいろ言ってきたが、私がこの作品で一番好きなのは、監禁された子供たちとバスの運転手である。極限状態の中で子供たちを安心させるために、バスの運転手は物語を話す。
陰惨になりがちな監禁された空間の描写の中で、運転手の物語が子供たちだけでなく読者の救いにもなる。
子供たちと運転手の心理描写は緻密に書かれている。
深まっていく運転手と子供たちの絆。ラストシーンは胸にぐっと来るだろう。涙腺の弱い人は注意が必要だ。

少し長めの小説だとは思うが、テンポのよさと飽きさせない構成で、あっという間に読めてしまうだろう。
読んで損はないと思う。一読をお勧めする。

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